生来の遅筆ゆえに予想以上に長引いてしまった調整録も今回で最後になる。
(本当は1月程度でさくっと終わらせるはずだったのだが)
これまで意図的に何度も"卸し損ねた荷"という表現を使ってきた。
となれば、最後を飾るのはこれしかあるまい。
【グリクシスコントロール】だ。
:「グリクシスは難しい」
遡ること数か月、【コントロールを考える『グリクシス』】回締めの一文である。
理由としては「置物及びPWにさわることができない」、この1点に尽きる。[青黒赤]というカラーリングの都合上、打ち漏らしたエンチャントやアーティファクト・PWただ1枚で負けてしまうというコントロールとしての致命手的欠陥。
《不帰 / 回帰》の登場により、現在は若干PW耐性の向上は見られるものの、置物がデッドリーであることは相変わらず、かといって有効な対抗策があるわけでもない。つまり、『グリクシスコントロール』を実現させるためには「置物をプレイされても勝てる構築」が必要とされるのだ。
ここまでが問題提起である。
これに対し、(数百戦と負け続けて)私が導き出した解決策は以下の2点。
● ボード重視
⇒ ヘビーコントロールからの脱却。
鉄壁の守りを成し得ない以上、「大量のカウンタ―で守り、数枚のエンドカードで勝つ」古典的なコントロールは成立しない。時間をかければかけるほど致命的な脅威に晒される危険が増すのであるから、ならばこちらから早期にプレッシャーをかけるしかあるまい。
幸いにも、グリクシスにはアドバンテージとクロックを兼ね備えた優秀なクリ―チャー達がいる。《つむじ風の巨匠》《ピア・ナラーとキラン・ナラー》などがその典型例で、これらのクリ―チャーを用いたミッドレンジ戦略へと転換する。
● ダメージ重視
⇒ 置物の上から勝つ。
ボードに対処できないならば別角度からの勝ち筋を用意すればいい = 直接ダメージである。グリクシスに含まれるラクドス・・・[黒赤]はマジックで最も殺傷能力に長けた組み合わせで、具体的には《木端 / 微塵》《無許可の分解》《残酷な現実》など、除去とダメージを兼ね備えたカードが多数存在する。
特に注目は《木端 / 微塵》。
主にアグロの除去兼ダメ押し目的で投入されるカードではあるが、その真価はコントロールでこそ発揮されるのではないだろうか。ゲームプランが速く土地総数も少ないアグロでは、せいぜい期待値は3~5点ぐらいといったところだが、土地が伸びるコントロールであれば打点期待値は10点近くまで上昇し、こうなればもはや一撃必殺だ。
というわけで、「ボード」と「直接ダメージ」を主眼に置き、特大の《微塵》と《残酷な現実》をフィニッシャーに据えた『グリクシスコントロール』を延々と1人回し ⇒ 完成したリストがこちらである。
実は、脳内 ⇒ 完成まで数枚しか入れ替わっていない。
一言で申し上げれば「コントロールに見せかけたビートダウン」で、「単体で強いカードを投入しつつ、それらを細かいシナジーで結びつける」という私好みのデッキであるわけなのだが、今回は最後ということもあり1枚1枚ご説明していこう。
・《ヴリンの神童、ジェイス》
2マナ圏の強烈なプレッシャー。
繰り返しになるが、《ジェイス》が活躍する条件は、
・他にクリ―チャーが存在すること
・優れたスペルが投入されていること
であり、このデッキではその双方を満たす。特に後者は、後程ご紹介する「スペシャルワン」をフラッシュバックすると幸せの絶頂になれる。
・《氷の中の存在》
2マナアクションの確保&アグロ・PW対策兼フィニッシャー。
ダメージソースが多いこのデッキにおいて7点の打点は非常に大きな意味を持つ。変身して1度でもアタックできれば特大《微塵》の射程圏に捉えることができるからだ。主力クリ―チャーがETBであるため、全体バウンスとの相性も悪くない。
・《つむじ風の巨匠》
・《ピア・ナラーとキラン・ナラー》
デッキの主力。
それぞれ単体で優れたクリ―チャーであるが、《つむじ風の巨匠》は「エネルギー供給源」、《ピア・ナラーとキラン・ナラー》は「アーティファクトをコストにしたダメージ源」と、デッキ全体のシナジーとしても働いてくれる。
・《奔流の機械巨人》
説明不要、青の嗜み。
除去・カウンター・ドローとフラッシュバックの対象には困らない。
・《艱苦の伝令》
《残酷な現実》はどこに?
実は《残酷な現実》には早々に問題点が発覚。確かに対処されなければ簡単にゲームに勝つことができるのだが、しかし相手が多数のクリ―チャーをコントロールしていれば価値が著しく低下してしまうのだ。さらに《残酷な現実》で勝てる状況であれば「別に《残酷な現実》がなくても勝てる」、所謂オーバーキルのゲームも多発。
代わりのフィニッシャーとして浮上してきたのがこのカードである。
こちらも癖が強く、巧く運用するためには・・・
・他のクリ―チャーが優秀なこと(除去の分散)
・十分な数の即席要員(アーティファクト)があること
を満たす必要があるのだが、このデッキでは何れも問題なくクリア。
「残れば大体勝つ」ことは《残酷な現実》と変わらず、自身が大型のクリ―チャーであるためいかなる状況においても価値が変動しない。素晴らしいのは、見た目上は7マナでありながら《つむじ風の巨匠》《ピア・ナラーとキアン・ナラー》~《策謀家テゼレット》《反逆の先導者、チャンドラ》まで合わせたマナブーストから、概ね1・2ターンは早くキャストすることができるのだ。グレート!
・《焦熱の衝動》
・《蓄霊稲妻》
・《無許可の分解》
グリクシスが誇る優秀な除去呪文群。
アーティファクトが豊富なこのデッキであれば、《無許可の分解》は概ね3点ダメージで打つことができる。本当は《蓄霊稲妻》よりも《癇しゃく》を採用したくて堪らなかったのだが、「2T:《密輸人の回転翼機》」を筆頭とする2マナアクションに対応するため断念。
・《検閲》
・《本質の散乱》
『ティムールコントロール』から続投のパッケージ。
マナカーブの都合上2マナ圏が必要なので採用。悪くはない働きをしてくれてはいるのだが、他により優れたカードの候補があれば是非お教え頂きたい。特に《検閲》はマナカーブを度外視すれば絶対に3マナの確定カウンターのほうが良いのだが、テンポがそれを許さない。
・《天才の片鱗》
青の嗜みその②。
それ以外にもはや書くこともない優秀なドロースペル。強いて言えば、稀によくある「4枚全部土地 ⇒ 次のドローも土地」コンボでやる気を削いでくるのは勘弁してくれ、程度。
・《電招の塔》
こちらももはや説明不要の1枚。
現実的な対処手段は《再利用の賢者》・(大体)《苦渋の破棄》・(時に)《先駆ける者、ナヒリ》(稀)ぐらいで、破壊されなければ優位は保証されたようなものだ。先手3T目にキャストできればアグロは大体ゲームエンド、PWへの牽制にもなり、「ダメージソースで勝つ」というデッキコンセプトにもピタリ。
・《反逆の先導者、チャンドラ》
・《策謀家テゼレット》
2対のPWは概ね同じ役割を担っている。即ち、
・ +でマナブースト
・ -でクリ―チャー除去
・ 奥義でゲームに勝つ
現在進行形でネタ扱いされている《テゼレット》であるが、よくよく見比べて見ると大活躍中の《チャンドラ》との共通点は多い。+1のアドバンテージ or ダメージ能力はなく、クリ―チャー除去能力も限定的ではあるものの、マイナス修正ゆえに神にも対処することができ、マナ能力はより便利な常在型、奥義の発動も1ターン早い。
つまり、一長一短なわけでデッキを選ぶものの十分に強力なPWなのだ。
もちろん単体性能だけに止まらず、前述の「《艱苦の伝令》高速キャスト」「《微塵》のダメージUP」「《無許可の分解》の3点ダメージ源」「《ピア・ナラー・とキラン・ナラー》の弾」等々、シナジーも豊富にある。
・《木端 / 微塵》
大正義、今回の"スペシャルワン"。
全てはここから始まったと言っていい。「コントロールでこそ真価を発揮する」という仮定はまさにその通りで、序盤は2マナ4点除去 ⇒ 終盤にはフィニッシャーとして運用できる。このカードの投入により速やかにゲームに勝つことが可能になり、「適当に削ってあとは《微塵》」という戦略を立てられるのも、大雑把な私には実にありがたい。
また、副次効果として対『ターボフォグ』相性が大幅に改善されたことも見過ごせない。
「置物破壊もカウンターも持たない遅いデッキ」は総じてLOへの相性はすこぶる悪いのだが、このカードがあるならば話は別。相手の《スフィンクスの後見》で必然的に墓地に落ちる《微塵》を《濃霧》構えの上から叩きつけてやればいい(THE 友情コンボ)。
・《闇の暗示》
今回の"スペシャルワン"その②。
「除去&ハンデス&回収」を1枚でこなす、とんでもなく幸せになれるカードで、実はMD中のNO.1フェイバリットカードなのだが、非常に癖が強く効果的に使うためにはいくつかの条件を満たす必要がある。
・ ①ミッドレンジ以上の遅いデッキである
・ ②除去が豊富に投入されている
・ ③デッキ中に相当数のクリ―チャーかPWが投入されている
・ ④カウンター主体ではない
従来の古典的な『パーミッションコントロール』では、回収できるカードが数枚のPWしかなく、構えるデッキにおいてソーサリー5マナは重すぎるため、③④をクリアできず巧く運用することが難しかった。しかし、このデッキであれば回収したカードも豊富にあり、基本はタップアウトコントロールであるためコストの重さもそこまで問題にはならず、冒頭の超アドバンテージ条件を比較的簡単に達成することができるのだ。
そして、巧く運用できた時の効果はまさにクリティカル!!
厄介なPWや神対策になるのが特に秀逸で、参考までに・・・
● 「相手の《熱烈の神ハゾレト》を叩き落としながら《チャンドラ》を回収」
● 「相手の《死の宿敵、ソリン》を叩き落としながら《奔流の機械巨人》を回収 ⇒ 次のターンにキャストし《天才の片鱗》をフラッシュバック」
●「《ジェイス》の忠誠値を使い切りフラッシュバック ⇒ 《不屈の神ロナス》を叩き落としつつ、墓地に落ちた《ジェイス》を回収して即再キャスト」
一例ではあるが、実際に行ったプレイである。
《ジェイス》が絡むと本当にヤバい、表裏で打てば大体そのゲームは終わっている。
以上、これが私の『グリクシスコントロール』…になるのだが、今現在は多少いじったリストでプレイしているので、最後にそちらをご紹介して結びとさせて頂くことにしよう。
・IN 《光袖会の収集者》×2
・OUT 《氷の中の存在》×2
潜在的なプレッシャーに過ぎないことと、中盤以降にドローした時の弱さがどうしても気に入らなかった《氷の中の存在》だが、《光袖会の収集者》であればほとんどマスト除去の直接的な脅威となり、エネルギー獲得手段が多いためいつ引いても悪くはない。
元々このデッキはコントロールにしてはアドバンテージ手段がやや不足していたきらいがあり、その点を補ってくれることも素晴らしく、手応えとしてはこちらのほうが良い。というか『エスパーリアニメイト』の時から思っていたことだが、このカード強すぎないか?
・IN 《不帰 / 回帰》×2
・OUT 《焦熱の衝動》×1 《無許可の分解》×1
PW強すぎ問題。
ボードと火力・《闇の暗示》で対策しているとはいえ、キャストされると対処に追われることは間違いなく、またMDではベタベタとPWを連打してくる品のない(失礼)デッキが多いため、クリ―チャー除去を減らしてPW除去を追加。
面倒なのでそのままにしているが、ここまで黒を濃くするならもう少し黒マナソースを増やしたほうが安定するだろう。
以上、特大ダメージで勝つとめちゃくちゃ気持ちが良いので是非1度試してみて欲しい。
プレイに際して1つ注意点を挙げるとすれば、「できる限り攻撃的にプレイすること」だ。
《微塵》の他にも《電招の塔》《無許可の分解》《ピア・ナラーとキラン・ナラー》《チャンドラ》等々、ダメージソースは豊富にあるので、ソプタートークンで1点でも多く削っておけば本体火力がゲームを終わらせてくれる。(アグロ相手に正面から撃ち合いを挑んでも勝てるコントロールなんて中々ないぜよ?)
それでは改めて・・・
これが私の『グリクシスコントロール』だ!!
最後までご覧頂きありがとう。
良きマジックライフを。
φ(-_@) 百人組手の人
2コメント
2017.11.27 13:00
2017.11.25 14:55