メタゲーム分析(最終)


 最終稿からはや2ケ月。

 

 『MTGアリーナ』の正式リリースはまだ先になるようなので、【我がマジック道】で述べた見解の答え合わせも兼ね、最後のメタゲーム分析を行っていきたいと思う。



■「全体除去はプレイしたくない」


 その通り、つまり正解。


・ 環境を定義付けている機体を対処できない

・ トップメタである『赤単』には多くの速攻クリーチャーが投入されている

・ 最強カードたるPWに触れることができない


 理由としては以上3点で、全体除去では根本解決にならない場面も多い。

 ゆえに、まずはボードでの対処を優先、『パーミッションコントロール』のような構造上どうしても必要な場合にのみ採用を検討し、それでも2枚程度に止めるべきだ。


 優先順位としては(デッキを選ぶが)《光輝の炎》⇒《ヤヘンニの巧技》⇒ その他。

 《光輝の炎》は別格の存在で、その軽さから単体除去と呼んでも差し支えなく、2ターン目 ⇒ 3ターン目のアクションを流すだけでも十分だ。《ヤヘンニの巧技》はリセットをかけながらテンポを捲り返すことができるカードで、《最後の望み、リリアナ》や《不屈の追跡者》に繋げる動きは非常に強力なアクションとなる。



「利用の賢者》は入れたくない」


 必要、つまり間違い。

 このカードが対処してくれるカードを"軽く"列挙してみよう。


・  機体全般(『アグロ』)

・《電招の塔》(『コントロール』)

・《ニッサの誓い》(『PWS』)

・《リリアナの支配》(『ゾンビ』)

・《オケチラの碑》《永遠の見守り》(『白系アグロ』)

・《スフィンクスの後見》《熱病の幻視》(『LO』)

・《選定された行進》《秘密の備蓄品》(『トークン』)

・  各種《機械巨人》


 ・・・一目瞭然だ!

 《再利用の賢者》は環境に存在する多くのデッキの、それも鍵となるカードを叩き割ることができる。かつて【黒緑グロウ】において「緑の《殺害》」と評したことがあるが、まさにその通りのカードで驚くべき柔軟性をデッキにもたらしてくれる。アグロの有無を問わず、緑を嗜むデッキであれば出来れば3枚、最低でも2枚は投入すべきだろう。



「《霊気圏の収集艇》は入れたくない」


 入れるべき、つまり間違い。 

 アグロ(特に『赤単』)に対して強いカードであるが、加えてアーティファクト対策が弱いMD環境で、単体でこのカードに対処できるカードは限られている。


・Tier 1

《致命的な一押し》:圏外(+紛争)

《闇の掌握》   :圏外

《蓄霊稲妻》   :圏外(+エネルギー充填)

 

・Tier2

《神聖な協力》  :+単体アタック

《稲妻の斧》   :+手札1枚


 ご覧の通り。

 無理なく対処できるのは前述の《再利用の賢者》ぐらいであり、採用頻度の高い除去のほとんどに耐性を持っている。《苦渋の破棄》《無許可の分解》《排斥》等々、色拘束やマナコストを広げれば対処できるカードは存在するが、極めて対処されにくいカードであることは間違いない。


 つまり、「アグロに対してはクリティカル・コントロールに対しても悪くない」究極的に丸いカードであり、アグロにおいては(同型戦も見据え)概ね投入推奨それ以外でもある程度のクリーチャーさえ確保できていれば、投入を検討するだけの価値はある。



■ 「『赤単』は支配的ではない」


 上記に関連して。

 MTGスタンダードの禁止・制限告知において、『ラムナプ・レッド』の恐るべき勝率が明らかになったが、MDにおいてはそれほど支配的とは言えない。


 《熱烈の神ハゾレト》《地揺すりのケンラ》《ラムナプの遺跡》といった『ラムナプ・レッド』を支えるカード達がMDでは枚数制限・未実装となっているが、中でも「《削剥》の不在」がMDでの『赤単アグロ』が支配者になれない最大の理由だろう。

 

 加えて《稲妻の一撃》がないこともあり、MD版『赤単アグロ』は《才気ある霊基体》《森の代言者》《密輸人の回転翼機》といった序盤の脅威となる"タフネス3"クリーチャーの対処に苦労させられ、《霊気圏の収集艇》や《電招の塔》といった致命的なアーティファクトの存在を許すことになり、コントロールの《奔流の機械巨人》を効果的に対処できず、「強力なデッキではあるものの、支配的なデッキではない」域に止まっている。

 


■「『機体』・『エネルギー』は支配的ではない」


 どちらも一時期のMTGスタンダードを支配したデッキではあるが、MDでは「十分に強力ではあるものの、暴力的とまでは言えない」


 こちらの理由は「ファストランドの不在」である。

 1ターン目のベストスタートが(M10ランドをアンタップインさせる)バトルランドであることも多いMDのマナベース事情においては、『機体アグロ』の《模範的な造り手》を1ターン目に無理なくキャストできることは少なく、『ティムールエネルギー』が2ターン目に《牙長獣の仔》をプレイするために3ターン目のタップインを許容する(またはその逆)ことも多い。


 ゆえに、綺麗に展開できた時には他を寄せ付けない強さがあるが、平均速度・安定性の面で支配的とまでは言えない。



「PW除去は入れたくない」


 あったほうが良い、つまり間違い。

 「PWに除去をキャストしたところでアドバンテージ損」というのはその通りであるのだが、それを享受してでもPWへの対策は必要不可欠と言える。対処できなければただ1枚で負けてしまう恐るべきカードに対して、迅速にゲームを決めることができる鋭角なビートダウンデッキ以外、すなわちミッドレンジ以上のデッキでは何らかのPW対策は用意すべきだろう。


 これについては、(再三再四申し上げていると思うが)「プレインズウォーカー」というカードが「デザインとして"ヤバすぎる"」ところが大きい。


 先のMTGスタンダードが『ティムールエネルギー』と『ラムナプ・レッド』に二極化した1番の理由は、「両タイプに優秀なカードが集中したこと」ではあるが、加えて「PWに対処するためには前のめりなデッキを使うしかない」という構造上の問題もある。


 ほとんど打点を持たないコントロールデッキが、押し寄せるクリーチャーの大群を捌きながら、後詰めとしてキャストされるPWを捌くのは(たとえ《ヴラスカの悪意》や《排斥》を有していたとしても)不可能に近い。必然「対処する」デッキは激減し、「押し付ける」タイプのデッキばかりが溢れることになる。


 もう少し掘り下げるならば、禁止・制限告知において禁止するべきは「《反逆の先導者、チャンドラ》」だったのではないだろうか。コントロールに対しての脅威としてはもちろん、『ティムールエネルギー』同型戦においても、最速3ターン目にキャストされた《チャンドラ》がそのままゲームを決める、というおよそゲームとは言えないゲームを何度も見かけた。


 1枚のカード"だけ"で勝敗が決まるゲームは健全とは言えない。

 強いカードには強い対抗策を、望むばかりである。



 以上、ご覧頂きありがとう。

 機会があればまた会おう。


φ(-_@) 百人組手の人

Magic Duels 百人組手

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