《ヤヘンニの巧技》。
いやいや、このカード自体はそれほど悪くはない。アグロの多いメタゲームに加え、《ならず者の精製屋》《ジェイスの誓い》など3マナの有用なカードが多いこのデッキでは、テンポを捲り返すダブルアクションとしても重宝できるだろう。
しかしながら、このカードには足りないものがある。
そう、浪漫さ。
そもそもの投入理由が「参考にしたリストに入っていてそのまま残っていた」という限りなく薄いものであったので、せっかくリアニメイトにフィーチャーするのであれば、何かもっと心を躍らせるようなカードを投入したいものだ。
「リアニメイトで心を躍らせる」となれば、クリ―チャー(それもETBが最良)ということになるのだが、とはいえデッキとの兼ね合いもある。すでに重たいカードで溢れていることを考えれば、《ヤヘンニの巧技》以下のマナコストが妥当だろう。
・ 4マナ以下で
・ ETBを持つ
・ 青か緑か黒かアーティファクトの
・ クリ―チャー
早速この採用条件で募集をかけてみる。
青・・・いない
緑・・・いない
黒・・・いない
主要三色を見送ったマルチカラーに"それ"はいた。
『ティムールエネルギー』回に引き続いてのご登場・・・
《もう一人の自分》。
厳密に言えばこのカードはETBではない。しかしながら、《害悪の機械巨人》や《森林の怒声吠え》の2枚目として運用でき、さらに「打ち消されない」能力は重いクリ―チャーとソーサリーを主力とする構造上「パーミッションコントロール」に弱いこのデッキの弱点を補完してくれる。
= 唱えて良し、釣ってよし。
条件通りの最高の人材。
最後のピースが嵌った!
・・・ように思えたのだが、実はこの応募者には重大な欠点があったのだ。
● 欠点①:《末永く》で同時に釣ったクリ―チャーはコピーできない
例えば、《末永く》で《害悪の機械巨人》と《もう一人の自分》を釣り上げたとしても、《もう一人の自分》で《害悪の機械巨人》をコピーすることはできない。
《末永く》の効果は2体のクリ―チャーを"同時に戦場に出す"というもので、《もう一人の自分》のコピー先を選ぶのは"戦場に出る前"なので、まだ戦場に出ていないクリ―チャーをコピーすることはできないからだ。
と書くと重大そうだが、実はこれはそうでもない。
もちろん痛いと言えば痛いのだが、ルーリング上も正しい処理である以上想定の範囲内。
問題は次である。
● 欠点②:《末永く》経由の《もう一人の自分》では、いかなるETBも誘発しない
それはあるフレンド対戦での出来事だった。
ゲームは終盤、意気揚々と《末永く》で墓地の《もう一人の自分》を釣り上げ、"すでに戦場に出ていた"《害悪の機械巨人》をコピーし勝利を決定づけようとした、その時である。
・ コピーされる《害悪の機械巨人》
・ 《もう一人の自分》が5/4威迫クリ―チャーに
・ ・・・終了
え?
いやいやいやおかしいだろ。
私のルール認識が間違っていなければ、《害悪の機械巨人》をコピーした《もう一人の自分》の「クリ―チャー破壊」ETBが誘発するはずなのだが、何事もなかったかのようにそのままターンが終わってしまったのだ。
混乱のあまり自分のルール認識が間違っていたのだと納得しそうになった後に、やっぱりおかしいと思い直し某ルール質問板で質問してみたりしたのだが、結論としてはルーリング上はコピー《害悪の機械巨人》のETBは問題なく誘発する。
つまり・・・
MD特有のバグ(-ω-●)
(ちなみに《死の権威、リリアナ》ならば問題なく誘発する)
これは看過できない問題である。
このデッキの切り札は《末永く》なのだ。であるはずなのに、切り札を切っても必ずバニラにしかならないということであれば、それはもう浪漫の欠片もないことになり、そんなものとても採用できる代物ではない。
こうして泣く泣く《もう一人の自分》を不採用とした後、青 ⇒ 黒 ⇒ 緑と何度もクリ―チャーを確認し、今度は忘れずにアーティファクト欄へと目を移しては見るものの、そこにいるのは《金線の使い魔》レベルのパンチに欠けるクリ―チャーばかり。
やむなくもう《ゲトの裏切り者、カリタス》とかで妥協しようかなどと諦めかけた、しかしその時ふと目に込んできたある記号。
◇。
そういえば調べていなかった、だがこのデッキはすでに3色だ。
ゆえにまさか4色目を使うことはないだろうと気にも留めていなかった第6のカラー◇、しかしその◇にこそ、待望の人材が潜んでいたのである。
《難題の予見者》。
彼の履歴書にはこのように書かれていた。
・ エルドラージには珍しい、唱えた時ではなく"戦場に出た時"のハンデスです
・ ですので《末永く》から釣り上げて頂いても活躍致します
・ パーミッションが苦手ですか? 私はマストカウンタ―になるでしょう
・ PWと破壊不能が苦手ですか? 先に私をキャスト頂ければ宜しいでしょう
・・・素晴らしい。
今度こそ「唱えて良し、釣って良し」の是非採用したい人材だ。
しかしデキる男はギャラも高い。
このカードは雇い主に必ず「◇」を要求してくるのである。
繰り返すが、このデッキはすでに3色なのだ。
ただ1枚のカードのためだけに4色目を用意するなんて狂気の沙汰としか思えない。
私も当初はそう思った。
しかし、マジックとは可能性だったのだ。
デッキリストがこちらである。
タイトな色マナマナサポートを実現させているのが《霊気拠点》と《ならず者の精製屋》で、《霊気拠点》は任意の色マナと◇マナとして、《ならず者の精製屋》は《霊気拠点》が失ったエネルギーを補充してくれる。
新たに追加した3枚の《霊気拠点》と1枚の《荒地》に、4枚の《進化する未開地》と1枚の《ガイア―岬の療養所》を合わせた◇マナ供給源は9枚。これは4ターン目の色マナ1色をサポートする確率としては十分な数字だ。
さらに嬉しい誤算として、《霊気拠点》の投入によりアンタップインの色マナ数を十分確保でき、タップインによる出遅れを恐れて外していた《伐採地の滝》を採用できるようになった。これにより対パーミッションへの相性も幾ばくかは改善が見られるだろう。
以上、これが私の『4Cリアニメイト』だ!
・・・
とは言ってみたものの、長々お付き合い頂いて恐縮ではあるのだが、このデッキは野良戦ではそこまで勝つことはできず、大体5割~6割ぐらいといったところである。しかし、それは決してデッキ自体のポテンシャルが低いというわけではなく、単純に「メタゲームに合っていない」のだ。
現在のメタゲームは、『赤系アグロ』『青系パーミッション』という遅速の2極に、『PWS』『LO』『ランプ』といったデッキが絡んでいるという状況で、言うなれば「異常に速いか異常に遅い」もしくは「ゲームの軸線をズラす」"対話拒否型"のデッキが大多数の中で、丸いデッキが勝ち切るのは難しい。
実際『アグロ』には軽いカードと除去を、『LO』には《再利用の賢者》を引き込めるかといったところで、鋭角的な攻撃手段を持たないゆったりとしたデッキ構造上『パーミッション』『PWS』『ランプ』への不利は明白だ。
しかし、私はこのデッキを使う。
理由は楽しいからだ。
勝てなければ勝負ではない。
されど、面白くなければゲームではない。
メタゲームなんてクソくらえ!
もう1度言おう。
これが私の『4Cリアニメイト』だ!!
ご覧頂きありがとう。
φ(-_@) 百人組手の人
4コメント
2017.11.03 13:01
2017.11.02 15:31
2017.11.02 13:01