黒白ゾンビ:調整録

 

 私は、アグロが苦手だ。

 

 コンバットそのものが不得手で、何よりビートダウンを決めた時の幸福感よりも、失敗し勝てる見込みの少なくなったゲームを続けなければならない絶望感のほうが大きいからだ。


 にも関わらず、初回がもはや語りつくされた感のある『黒白ゾンビ』というアグロデッキであるのは、私にとってゾンビが"降ろし損ねた荷"だからだ。



 遡ることはや4か月、フライデーで取り上げ、私が製作した『黒白ゾンビ』である。

 マナカーブを埋めるために「おいおいリミテッドか?」(しかも「イニストラード」リミテッドでもそこまで点数の高いカードではない)という《ギサの召集》が投入された中途半端なリスト。その後に《秘蔵の縫合体》《憑依された死体》というドレッジ風味を加えた『黒青ゾンビ』を一応の完成形としたものの、ある疑念とともに私の中で燻る思いが残っていた。

 

 本当にこれが完成形なのだろうか?


 そして、ゾンビと戯れること(体感)約200戦。 

 ミイラ取りがミイラになりかけた頃、疑念が確信に変わる。



・《リリアナの支配》は必要なのか?

 このカードは文句なしに強い。 

 「トークン2体」+「全体強化」能力は単体カードパワーとして申し分なく、ゾンビとのシナジーもある。ゾンビを組むならまずこのカードから考えてもおかしくない程のカードである。


 しかし、私はこのカードをどうしても好きになれなかった。

 ゾンビデッキをお持ちなら確認してみてほしい。大量の3マナ以下のカードと、ぽっかりと空いた4マナ域のあとに、鎮座する2枚の《リリアナの支配》があるはずだ。


・ 明らかに浮いた5マナ域

・ それゆえに土地を多めにしなければならず(=フラッドリスク)

・《密輸人の回転翼機》で余剰な土地を捨てることもできない

 

 強力であるがゆえに、デッキそのものを歪めてしまっている。

 そう思えてならなかったのだ。


:「《金属ミミック》《無情な死者》が収録されておらず、加えて必要パーツの枚数制限からカードパワーの低下は否めない」


 当たり前のことを念押ししているに過ぎないこの考察こそ、実は核心であったのかもしれない。

 全体的にカードパワーの劣るデッキで、いくら強いといっても2枚の重たいカードに頼っていて勝てるはずがない。であるならば、目指すべきは「シナジーを最大限意識した瞬速のビートダウン」、形振り構わないクソビートこそ、ゾンビの本領ではないのか。



 ・・・


 こうして完成した、私のMD版『黒白ゾンビ』最終形がこちらである。

 オール3マナ以下という超鋭角なマナ分布。鍵を握るのは《墓所破り》《戦慄の放浪者》に加え、《扇持ち》《ただれたミイラ》までフル投入の「12枚の1マナクリ―チャー」だ。



● ビートダウン(ワン・ワンワン)

 白ウィニーの最速ムーブを表現した言葉だ。

 「1ターン目に1マナクリ―チャー ⇒ 2ターン目に2枚の1マナクリ―チャー」をキャストし、そして3ターン目にはアンセム(+1/+1効果を持つカード)を叩きつけるというのが理想なのだが、これは同様の《呪われた者の王》を持つ『黒白ゾンビ』にも当て嵌まる。


 ワン・ワンワンの中に《墓所破り》が含まれていれば最良だ。

 「1ターン目に1マナゾンビ ⇒ 2ターン目に1マナゾンビと《墓所破り》」というアクションをすれば、2ターン目にしてカードを引くことができる。ポイントは《墓所破り》のキャストを2ターン目の最後にすることで、ドローは自身のタップ能力ではないため、相手が除去を持っていたとしても1枚ドローを確定させられる。



● シナジー

 《束縛のミイラ》《むら気な召使い》などのゾンビシナジーを考えれば、軽いゾンビは多ければ多いほどいい。特に、4ターン目に「《戦募の巨人》⇒ 1マナゾンビ」からゾンビトークンを確定させるのは強力なアクションになる。


 高速でゾンビを並べたあとは、”スペシャルワン”の出番だ。


 《オケチラの名のもとに》が《リリアナの支配》の代役を務めてくれる。

 効果は1ターンだけでトークンを出すこともできないが、コンバットトリックとしてもキャストでき、《リリアナの支配》より3マナも軽い。パワー2のゾンビが3体いるだけで12点もの打点になるので、往々にしてゲームに勝つことができるだろう。


 「全体除去を打たれたらどうするのか」だって?

 確かに、こういった横並べ戦略は全体除去には弱い。《光輝の炎》なんて最悪だ。しかし、このデッキは実質半数近く(28枚)がクリ―チャーであり、《戦慄の放浪者》《戦墓の巨人》《疫病吹き》《密輸人の回転翼機》《乱脈な気孔》という全体除去対策となるカードも入っているので、リカバリーできないこともない。


 そもそも、「全体除去を打たれたら負ける」ではなく「打たれなければ勝つ」アプローチをしたほうがアグロ戦略に適っている。相手のデッキには全体除去がないかもしれない、入っていても2枚程度なのだから、引かれる前に決めてしまえばいい。



● Next


 私がこのデッキで入れ替えを検討するとすれば、3枚だけだ。


・ 1枚の《平地》

 土地は多めに23枚採ってる(実際これでもギリギリに感じるが)。

 序盤から(黒)(白)を捻出しなければならず、ダブルアクションを考えればスムーズに土地をプレイしたいのと、何より「手札のカードをキャストできない」のがマジックで最も不快指数の高い負け方だと思っているためだが、リスクを許容できるなら、追加の《オケチラの名のもとに》と入え替えてもいいかもしれない。



・ 2枚の《闇の掌握》

 《致命的な一押し》《闇の救済》に次ぐ6枚目の除去だが、《扇持ち》《束縛のミイラ》で戦線をこじ開けることができるし、このカードでは《霊気圏の収集艇》《領事の旗艦、スカイソブリン》といったゾンビにとって厄介なカードを倒すことができない。それらに対処できる《苦渋の破棄》と入れ替えるか、あるいは《屑鉄場のたかり屋》を追加すればさらなる除去耐性の向上が期待できる。


 アグロの最も美しい勝ち方は、手札を使い切って勝つことだ。

 「「アガリだ」と宣言しながら、最後の1枚をテーブルに置く」

 この『黒白ゾンビ』なら、至福の瞬間を味わうことができるだろう。



 以上、ご覧頂きありがとう。


 φ(-_@) 百人組手の人

7コメント

  • 1000 / 1000

  • 道場主

    2017.10.29 13:16

    @嵐王いえいえ! >《肉袋の匪賊》 投入しません。 理由は「ゾンビを横に並べたいから」ですね。 投入するのであれば、併せて《異端の癒し手、リリアナ》も候補になるでしょう。 ・《扇持ち》 仰る通り、カードとしてはそこまで強いカードではありません。 しかし、このデッキの目指すところが「クリ―チャーを高速展開してのビートダウン」であるため、1マナのゾンビとして投入しています。ですので、運用としても概ね「手札からダンプ ⇒ 全体強化でパンプしアタック」というものになりますが、時折タップ能力が有効に機能する時もあります。 《墓の収穫》入りですとゲームプランがミッドレンジよりになりますし、能力起動のマナも競合しますので使いにくさを感じるのではないでしょうか。
  • 嵐王

    2017.10.28 02:56

    @道場主見解をいただきありがとうございます。さらに質問ですが肉袋の匪賊は投入しないのですか? わたしは墓の収穫をフル投入していることもあり束縛のミイラと組ませるととてつもなく心理戦に持ち込めるのですが。 あと、扇持ちは使って弱いと感じました。パワー1はあまりダメージレースになりにくく、毎ターン手札や墓地からマナを使ってゾンビを出していることもありあまりうまく使えていません。 もしよろしければ扇持ち使用のアドバイスをいただきたいです。
  • clochette2

    2017.10.13 03:11

    @道場主人間とゾンビの比較、確かにサイズ以外の面では人間よりゾンビのが優れていますし、サイズが小さいことも除去、威迫、《オケチラの名のもとに》などで十分補えますからね。。。 数戦ですが自分で回してみた感触もゾンビのが良かったです。 返信ありがとうございました。